楽茶碗は大嫌い!? でも茶碗を焼きに焼きまくる男『迷雲』のブログ

楽茶碗の製作は地味で熱いなどシンドイことばかりですが、楽茶碗師『迷雲』が製作を通して感じたこと、知っていること、時たま脱線したこと(いつもかな?)を書き綴っていきます。

楽茶碗を語る上での「オッカムの剃刀」

楽茶碗のいろいろな説明には、ある過去の記事や説明が、まるで真実のように語り継がれることが多々あります。

○赤楽は脆いので現存する赤楽は少ない。
○秀吉は派手好きだったので黒楽は嫌いだった。
本阿弥光悦(ほんあみこうえつ)は素人だったので作品に「ヒビ」がある。
○長次郎の黒楽の「かせ肌」は、長年の経年変化による。

などです。

確かに赤楽は、黒楽より焼く温度が低いので、赤楽は黒楽よりは脆いとも言えます。しかし、長次郎の赤楽の中には、焼きもしっかりしている茶碗も存在します。

まして壊れても継いで使う茶碗の世界ですから、赤楽がただ脆いと言うだけで「現存する茶碗が少ない」と結論するのは間違いだと思います。

秀吉が派手好きだったので、黒楽茶碗は嫌いだった。この話も何か府に落ちません。

「四神思想」の前のブログでも書きましたが、天下人の象徴は大手門の入口である南に位置する朱雀門(朱)と中央に位置する黄龍(黄)です。

秀吉の有名な「金の茶室」は畳は朱肉色、あとは全て金色。刀の鞘である秀吉の「拵え」は同じく金と朱色の色合いです。

そこには単に「秀吉は派手好きだったから」とは言えない理由があるのです。

本阿弥光悦の「ヒビ」に関しては、光悦は素人だったから!と誇張して語られますが、茶碗作りを商いとしていなかっただけです。

茶碗作りが素人だったら、あのような名品茶碗は出来ません。

次は長次郎の「かせ肌」について!
確かに経年変化はあります。黒楽の釉薬の原料は加茂川石を砕いて作ります。

この石は鉄分が多く含まれているので、経年により風化して多少錆びて来ます。そこに味があるのですが、焼いた時点から今の黒楽とは違うんです。

釉薬の配合、焼き方が違います。現代でも「かせ肌」を再現することは可能なのです。私自身がそのように焼いていますから事実です。

オッカムの剃刀(オッカムのかみそり)と言う言葉がありますよね!その意味とは、「ある事柄を説明するためには、必要以上に多くを仮定するべきでない」と言うことです。

14世紀の哲学者・神学者のオッカムが言った言葉です。

私も含めて、このオッカムの言葉は茶碗を語る上で大事にしなければなりませんね!

Copyright 2014 meiun All rights reserved.