黒楽茶碗の『黒』の色合い
黒楽茶碗の黒の色合いは沢山あります。長次郎の作品で言えば、『大黒』は黒の中に茶色の粒子が混じっていて、厚みのある味わいの黒です。
同じ長次郎の作品『俊寛』は、茶色の粒子は殆んど見られず、真っ黒に見えます。
また、利休の愛した長次郎作品の『禿』は茶色の中に黒が点在する色合いを見せています。
そして、ノンコウ(道入)や光悦になると、黒と茶の色から更に色が加わり、青味が入るものもあります。
洋服や喪服でも同じですが、『黒』の色彩は混ぜ合わす色が少ないと安っぽい色合いになり、またいろんな色が混ざり合う『黒』は品があり、重厚感を増します。
ですから、単純に黒と言っても、どのような『黒』を茶碗で焼き上げるかが大変なのです。
やきものの焼成温度がピザやパンの焼く温度だったら200〜400度位ですかね?
この位の低温だったら色変化も大して無いと思うんですが、温度が1000度を超えると、何もかも別世界となます。
その別世界とは、何でも溶かしてしまいます。炭の灰も窯壁も溶け出して来る温度です。
火も普段の炎とは違います。窯の中の炎は全く見えなくなり、オレンジ色の水が窯全体に満たされ、ユラユラしている感じなんですよ!
その中で黒の色を焚き方によりコンロールするのは至難の業です。
同じ釉薬や同じ施釉方法をしても、全く同じ様に焼き上がらず、色も異なることは当たり前の黒楽茶碗の世界です。
黒楽茶碗は艶の無い『カセ肌』を好む人は多いですが、真っ黒一色の『カセ肌』の黒楽茶碗は、味も素っ気もありません。
黒の中に茶があったり、茶の中に黒がある黒楽茶碗が一番味わいがあるんです。
しかし、こんな茶碗を焼くのは至難の業!還元で焼成して釉薬の8割〜9割融けた段階で酸化焼成にして茶碗の表面のみ茶色にしたり、また逆に酸化焼成して最後に還元で表面のみ黒色ににしたりするんです。
焼成中の茶碗は真っ赤です!その真っ赤に焼けている茶碗を、瞬間的に窯を開けて、釉薬の感じを読み取るのです。
想像出来きますよね!その一瞬作業が!
やきもの全般に言えることですが、如何に沢山の色あいある作品にするか?そこが、茶碗のポイントになるのです。