楽茶碗に起こる二つの割れ
楽茶碗が割れる原因は、使用中の破損は別にして二つあります。
一つは「冷め割れ」です。この「冷め割れ」は焼成完了直後に起こります。
もう一つは、「残留応力による割れ」です。この割れは焼成後から時間がある程度経ってから起こります。
どちらの割れも、作者にとってはガックリ来ます。なぜならクタクタになりながら焼いた茶碗ですからね!
でも、これらの割れは防げない部分もあるんですよ!
冷め割れが起こる原因は茶碗の各部分の厚さの違いで、焼成後は黒楽茶碗などは一気に水の中に入れて急冷させるので、各部分の収縮度合いが異なるために、歪が生じて割れてしまうのですが、楽茶碗の製作が上手くなっても、そのリスクはあるんです。
例えば、光悦茶碗の写しや光悦の美的センスをモチーフにした茶碗を作るときは、茶碗の各部分の厚さが異る場合があります。
そのような茶碗を作るときは、冷め割れのリスクは避けられないことがあります。(※とにかくゆっくりと冷やすことが大事!)
また、焼成後までは、全く割れが発生していなくても、次の日から何十年後に割れることがあります。
この割れが「残留応力による割れ」なんです。
焼成後は見た目は問題がなくても、茶碗の中には、歪の応力が残っている場合があります。残留ですね!
この残留応力が残っているために、何か後日問題があると、「ピン!」と入(ひびのこと)が入ることがあります。
勝手に経年に入ることや、湯を入れた途端に入ることがあります。
余談ですが、あのF1のボディーはカーボンで作られていますが、やきものではないのに、ボディーを作った後には、凄い残留応力が残っているんですよ!
カーボンと樹脂が乾燥する段階で、各部分のカーブの違いや引っ張られかたで、元に戻ろうとする残留応力が溜まってしまいます。
その結果、歪が出てしまい、歪んだボディーとなってしまうために、そのボディーに残る残留応力を取らなければなりません。
よって、そのボディーが入る窯の中に入れてある一定時間、熱して残留応力を徐々に取っていくんですよ!
ですから、楽茶碗の器の厚さは、初めはなるべく均等な厚さにしたほうが、破損は防げます。