幻の窯「姫谷焼」の陶工の技術
広島県福山市の北側の山間に、日本三大色絵の一つてある「姫谷焼」の窯跡があります。
日本三大色絵と言えば、残りは「九谷焼」と「有田焼」ですね!
この姫谷焼も同時期に稼働していた窯なのですが、あまり知名度はありません。
なぜなら、一人の陶工が作っていた窯であるために、作品がとても少ないんです。
よって流通量が殆どないために知名度はありませんが、技量は半端ではありません。
この窯跡でびっくりしたことがあります。
この窯は登窯なのですが、その築窯に使っていた窯壁の残骸と作品を焼いくための道具であるサヤです。
窯壁は粘土を固めてレンガとしていましたが、そのレンガの密度なんです。
スカスカに作ってありました。普通のレンガであれば、皆さんも見ているレンガですから、レンガ自身に隙間はありません。
しかし、姫谷のレンガはスポンジのように隙間だらけです。
この技術はここで初めて見ました。
現代の築窯に使用する発泡レンガです。
皆さんも知っていると思いますが、ポットなどの魔法瓶。
今は魔法瓶なんていわないのかな?
お湯を入れても冷めにくいから魔法瓶と命名されたと思いますが、魔法瓶はポットの外装の中に隙間を全体にあけてガラスビンが入っています。
空気が一番の断熱材だからです。
ですから、姫谷の陶工はその理屈が分かっていて、隙間だらけのレンガを作り、そのレンガで築窯していたのでびっくりしたのです。
次に驚いたのがサヤです。
サヤの中に作品を入れて焼きますが、なぜサヤの中に作品を入れて焼かなければならないかご存じですか?
サヤに作品を入れて焼かないと、作品が窯の燃焼による灰を被ってしまい、作品が汚くなるために、サヤに入れて焼くのです。
そのサヤが作品のように綺麗にロクロにて引いてありました。高台をつければ、それはもう作品になる位出来がよいのです。
普通は室町~桃山時代に稼働していた土岐の大窯でもサヤはたくさん使っていましたが、ロクロでサッと引いた入れ物程度なんですが、姫谷は違っていました。
そんな道具にさえ綺麗に作る陶工でしたから、現存している作品も見事です。
出張や旅行などで福山に行く機会がありましたら、新幹線の福山駅前に博物館がありますので、そこには数少ない姫谷焼が展示してありますから、是非見に行ってください。