宗入の黒楽茶碗の技法について
先日見学に来られた女性が楽茶碗の五代「宗入」の作品がお好きだと言うことで、今日は私なりの宗入の焼きについてお話しします。
宗入の黒楽茶碗の釉調は、漆黒で長次郎のカセ肌とは趣が全く異なることはお分かりだと思います。
詳しく解説すると、宗入の黒楽茶碗は還元から酸化に焼成が移行していません。
どういうことかと言うと、黒楽茶碗の釉薬の原料である加茂川石は鉄分が多い岩石なので、還元で焼を止めると、黒一色になります。
逆に還元から酸化に持っていって焼き上げると、釉薬の表面は黒一色から茶色を帯びた色合いが混じります。
この現象から察するに、宗入の黒楽茶碗は還元で焼成を終わらしている可能性があります。
しかし、作品の中には、高台脇や見込みが酸化して茶色になっている作品もあります。
これらの茶碗は二度焼成の可能性があるのです。
要は焼き上がった作品に錆土等の含鉄土石を全体に塗ります。
そして、その後に布や刷毛などで、不要な部分の含鉄土石を取り、再度焼き付けするように焼くと、茶碗の表面が風化して錆びたような釉調にすることが出来ます。
次に前後しますが、黒一色のガサガサした釉調ですが、二通りの方法があります。
先ずは、とにかくゆっくり温度を上げていき(還元だからゆっくりしか温度は上がって来ませんがね!) 、釉薬が完全に定着する前に焼きを終わらすやり方が一つ。
次は、加茂川石を粉砕するときに、二種類の細かさの加茂川を作り、調合の時に、その細かさの違う二種類の加茂川石で調合するやり方です。
この調合の釉薬では、細かい加茂川石は砂の細かさの加茂川を定着差せる役目となり、焼き上がりの釉調は砂地のような多少ガサガサした感じになります。
このように、焼きだけではなく、当事の作り手はいろんなことを試しているんです。