楽茶碗の製作工程を知り、新たな発見を!
楽茶碗の製作で一番難しい所ば、何処だと思いますか?形を作ること?違います。答えは釉薬の調合と釉薬がけ、また最後の焼成なんです!
茶碗の形は誰でも茶碗の写真をたくさん見れば、なんとなく形は出来てしまいます。
しかし、釉薬の調合、釉薬がけの仕方、そして焼成となると、経験と失敗から得られた知識が必要となるから難しいのです。
黒楽を例に上げれば、同じ調合の黒楽釉で何碗も焼成はしません。焼いて1~3碗です。また、同じ黒楽釉を使用しても、釉がけ方法を変えたり、違う調合の黒楽釉を茶碗の景色とするなど、釉薬がけに工夫を加えているんです。
なんとなく難しさが感じられますか?桃山時代の長次郎の作品を良く観察して見ると、同じ黒楽でも表現を多彩に変えているんです。
ここで少し話は脱線しますが、皆さんの友達や兄弟姉妹、ご両親の方々の顔は当然分かりますよね!
では、その中の方で一番身近な方の「ホクロ」は顔に何個ありますか?
「急に言われても!」なんて言う感じで分かりませんよね!
楽茶碗も実は同じで、見る対象をしっかり把握していないと、全体像ばかり見えて来て、細かい部分までは目が行き届かないんです。
でも、これからは大丈夫です。「ホクロ」の例と同じように、黒楽の釉薬が少しづつ変えられていることがあることを知ったので、これからはその部分も観察してみてください。
最高の難関は焼成です。これも経験則がものを言う世界なので難しいのです。
その日の気温や湿度。また入手した炭の良し悪しにより、茶碗の焼き上がりは全く異なる厄介な作業なんです!
しかし、楽茶碗に於いては、他のやきものと異なり90%は焼成前の工程により作品の良し悪しが決まります。
ですから、焼成工程はその今までの成果を最大限に活かす工程だと言っても過言ではないと思います。
強くフイゴを吹けば、楽窯の窯内の温度は簡単に上げることが出来ます。
しかし、炎はハードフレーム(勢いがある炎)となってしまい、作品に一気に炎が吹き付けられるために、釉薬の溶けにムラが出てしまいます。
作品全体をムラなく、優しく釉薬を溶かして行くためには、ソフトフレーム(柔らかい炎)が必要なのです。イメージとしては、ロウソクの炎です。
そんな優しい炎で黒楽の釉薬を溶かし込んでいくんです。半熟卵を作って行く感じかな!
そのために、焦らずじっくりと楽窯の内部の圧力を吹く手で感じながら適切にフイゴを吹いて行くんです。
何となく楽茶碗の焼成雰囲気は分かって頂けました?
どの様に楽茶碗が出来きたかを想像しながら展示会などで長次郎の作品をこれから見て頂けたら、新しい発見があるかもしれませんよ!