楽茶碗 『釉薬の基本』
楽茶碗での釉薬の原料は色々ありますが、中でも「白粉」、「白玉」、「珪石」は主要原料です。
「白粉」とはあの「おしろい」のことです。江戸時代の花魁などが顔を白くするために使った白い顔料です。
当時は「おしろい」の毒性も分かっていませんので、毎日顔を白くするために、今で言うファンデーションのように化粧で使用していました。
てすが毎日直接「おしろい」を使い化粧するので、多くの女性が鉛毒症になりました。
何故なら、「おしろい」は鉛が酸化したものだからです。しかし当時の人は鉛が毒だと言うことを知らず、「おしろい」は真白なので化粧に多用されたのです。
この「白粉」は低温釉には必ず必要な原料です。物を融かす力があるんです。
ですから、楽焼や色絵磁器や色絵陶器には切っても切れ内関係があります。
しかし、その毒性から現代では伝統的な陶器や磁器以外の食器に関しては使用を禁じています。
そうは言うものの、鉛系を使用しない作品の色合いは、鉛系を使用した作品と比べると雲泥の差で鉛系の色合いに軍配が上がるのが現実です。
釉薬が完全に融解していれば、さほど心配無いというのが、京都陶磁器試験場の見解ですが、楽焼の向付(むこうづけ)などには酢の物などの酸は避けたほうが良いと思います。
そんな「白粉」ですが、単味でも釉薬にはなります。少し黄色オレンジがかった色合いに熔けます。
しかし、釉に厚みが出ません。そこで「白玉」を加えます。「白玉」は釉薬に厚みを持たすために使用するんです。
別名フリットとも言います。要はガラスの粉と思っていて差し支えありません。
残るは「珪石」ですね!この珪石は非常に溶けにくい物なのです。ですからその性質を利用して、釉薬の融点を変えるために使います。
例えば、「白粉」だけで焼成して、もう少し釉薬に厚さが欲しい場合があったとします。
「白粉」を厚く塗ればいいと思いませんか?しかし、「白粉」単味でも確かに釉は厚くなりますが、「白粉」単体では融けた感じの肌触りが、フワフワした感じになってしまいます。
ですから、釉薬に厚みを出す場合は、「白玉」を加えます。
最後の「珪石」は、融点の温度調節に使うと言いましたね。楽窯は外窯と内窯と言う二重構造になっています。
その外窯と内窯の間には指二本〜三本分の隙間があります。この隙間に炭が入る訳ですが、この隙間が広くても狭くてもいけません。
赤楽焼成の場合は、フイゴは使用しませんので、自然焼成で炭の自己燃焼に任せますが、隙間が狭すぎると温度は上がらず、広すぎると温度が一気に上がり焼きにムラが出てしまいます。
ですから、楽窯の内窯と外窯の隙間はいつも一定として、初めて釉薬の調整が出来るのです。
変数がたくさんあると、訳が分からなくなります。ですから変数は必ず一つにしてから釉薬を調合してください。