楽茶碗は大嫌い!? でも茶碗を焼きに焼きまくる男『迷雲』のブログ

楽茶碗の製作は地味で熱いなどシンドイことばかりですが、楽茶碗師『迷雲』が製作を通して感じたこと、知っていること、時たま脱線したこと(いつもかな?)を書き綴っていきます。

長次郎作品の黒楽茶碗「大黒」と赤楽茶碗の「無一物」

長次郎作と言われている黒楽茶碗の「大黒」と赤楽茶碗の「無一物」。

共に名作です。

色は違えど、これらの茶碗は同じ作者です。

一般的に長次郎作と言われていても、当時は集団で作業していましたので、正確には「長次郎焼」と言ったほうが理解しやすいと思います。

ですから、長次郎作の中には明らかに異なる手グセがあるのです。

ですが、前述の「大黒」及び「無一物」は黒楽茶碗と赤楽茶碗の違いはありますが、同じ作者です。

その根拠は双方の茶碗正面に於ける景色の意匠が共通の技術を用いているからなのです。

その意匠とは、茶碗を持つ時の左手の親指のかかりに当たる部分を、砂薬を微妙に使い、意匠と用を兼ね備えた景色をしています。

この砂薬とは、江戸中期以降の赤楽茶碗によく使用されますが、釉薬の中に細い砂がポツポツと入っている釉薬です。

「大黒」と「無一物」の正面のみに施した砂薬は江戸時代の砂薬と全く異なり、砂が敷き詰められた砂同士をつなぎ合わせるように薬がついています。

簡単に言えば、接着剤みたいな感じです。この技法の茶碗は今まで見たことはありません。

他の長次郎作品と言われる作品でもないんです。

それだけ難解な技法を使っている茶碗なので、これらの茶碗は只者ではないのです。

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