黒楽茶碗の発色の難しさ
黒楽を焼いていると、いろいろな現象にであいます。
その一番が焼き上げる少し前から如何に酸化炎に持っていくかです。
還元のままだと、加茂川釉の発色が黒過ぎてしまい、趣が足りないのです。
これは好みも関係しますが、長次郎作品の黒楽茶碗である「俊寛」は、他の長次郎作品とは異なり、茶碗も薄作りで茶溜りも綺麗な円を作っていますが、黒の色合いが強く出ています。
他の長次郎作品にある茶色の発色がありません。
このような作品は還元炎で作品を焼き上げた時に上がります。
黒が効いた黒楽も悪くはないのですが、やはり黒の中に茶色がある黒楽の方が趣を感じます。
皆さんはどちらが好きですか?
その茶色と黒色が微妙に混じり合う黒楽は案外難しいのです。
還元から酸化炎に如何にタイミング良く戻すかにかかっています。
もう1つの難しさは、酸化炎になると一気に温度が上昇します。
なので、酸化炎になったら、フイゴの吹きは、それに伴い弱くしないと黒楽はドロドロに融けすぎとなります。
ですから、如何に還元で加茂川石を黒く変色させて、酸化炎に変えてから適度に黒くなった加茂川石を適度に茶色にしていくかがテクニックなんです。