楽茶碗は大嫌い!? でも茶碗を焼きに焼きまくる男『迷雲』のブログ

楽茶碗の製作は地味で熱いなどシンドイことばかりですが、楽茶碗師『迷雲』が製作を通して感じたこと、知っていること、時たま脱線したこと(いつもかな?)を書き綴っていきます。

長次郎の楽茶碗と黒織部茶碗の共通点

長次郎の黒楽茶碗と織部焼の黒織部茶碗には共通点があることをご存知ですか?

突然共通点と言われても、両者には時間差が有りますよね!

でも、不思議と共通点があるのです。同じ黒だからではありませんよ。

そうそう、黒織部の説明をしなければなりませんね!当時は別に両者の区別は無かったと思いますが、後生両者を分けるために黒織部と織部黒と言う呼び名が付きました。

黒織部は織部形の真っ黒な茶碗です。黒が後に付く織部黒は茶碗の正面等が白抜きの窓になり、その他は真っ黒な茶碗のを言います。

別に大した事ではないので、「はぁ~‼」位で結構な雑学です。

本題の長次郎の黒楽茶碗のと黒織部の共通点ですが、焼き方なのです。

織部焼は登り窯で焼いているのが普通です。

しかし、上物の黒織部茶碗では、どうも登り窯では焼いていないようなのです。

その根拠は、「伏せ焼き」の痕跡があることです。

伏せ焼きとは、楽窯は作品の下から、もしくは下と横から炎が上がります。

するとどうしても茶碗の見込みの焼けるのが一番遅くなります。見込みまでしっかり焼こうとすると、時間を要するために茶碗の側面が溶けすぎてしまいます。

なので、それを防ぐために、まず、茶碗をびっくり返して伏せて焼きます。

伏せて焼くと口縁部分に大きくキズが付いてしまうために、専用のトチを作ります。

そして、ある程度見込みが溶けた段階で火ハサミで茶碗をひっくり返して、正常の置き方で焼きます。

これを伏せ焼きと言います。でもこの技法は、今や幻となりました。

何故なら、トチでどう口縁部分の当たりを小さくしても、目痕のようなキズは口縁部に残ります。

また、楽家3代以降は楽茶碗の焼き方も変わり、サヤに茶碗を入れて焼くようになりました。

サヤに入れて焼く利点は、茶碗がサヤの遠赤外線により均一に仕上がるからです。

よって、黒織部茶碗は登り窯での焼きではなく、また楽窯により伏せ焼きをしていた可能性がとても大きいのです。

ただし、黒織部茶碗の上物しか口縁部分のトチの痕はないので、上物のみですけれどね!
3代道入(のんこう)の楽茶碗の作品を見るとわかりますが、勇躍が長次郎の茶碗より均一に焼けていますよね!それがサヤの効果です。

このように伏せ焼きをすると、必ず口縁部分にはトチの痕が数点付きます。

長次郎の黒楽茶碗の「ムキ栗」、「大黒」の口縁部を上から観察すると、そのトチの痕が分かります。

その痕が織部焼の黒織部茶碗にもあるのです。

有ると言うことは、登り窯ではなく楽窯で一碗づつ焼いていた。また伏せ焼きをしていた可能性が大なのです。

登り窯ては伏せ焼きは出来ません。。焼いている途中で窯口を開けて作品が窯詰めされている場所にて茶碗をひっくり返すことは不可能ですし、窯の側面からも同様に不可能です。

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