光悦の「乙御前」の直しの漆について
昨日もお話しした光悦の赤楽茶碗「乙御前」の茶碗、正面上部に欠けた部分や高台ワキの亀裂に対して漆を埋め込んでいます。
その漆を見ると、今の赤漆や朱漆より渋い色合いなんです。
その色がとても気になりました。経年変化ではなさそうなんです。
通常、赤漆や朱漆は、天然の漆に赤の顔料を加えます。
赤の顔料と言えば、思い付くのが水銀朱、若しくは天然辰砂です。
しかしこれらの顔料だと色がもっと明るくなります。
では、経年変化ではなく、元来の発色だと仮定すると、ベンガラの可能性があります。でも今の陶芸材料でのベンガラではありませんよ。
工業製品として出来たベンガラではなくて、元来のベンガラです。ベンガラは第2酸化鉄ですね!
なので工業的に簡単に作れます。不純物がありません。
このベンガラで、現代の黒楽茶碗は簡単に出来ますが、不純物が含まれないために、何か味わいの無い黒楽茶碗になります。
ベンガラの第2酸化鉄は日本では何処にでもある土石なんです。
鬼板も第2酸化鉄も一般名は含鉄土石。
鉄の含まれる量によって名前が違うのです。
ですから縄文時代の土器、古墳時代の石室内にはベンガラが良く塗られていました。その意味は邪気を払うような意味合いがあったようです。
ベンガラの名前はインドのベンガラ地方から来ているんですよ。全速力ベンガラ地方はベンガラの産地だからです。下の寺院の壁もこんな茶褐色のベンガラのような石で出来ています。
話が分散してしまいましたが、要はベンガラを昔か使っていたので、漆の顔料はベンガラかも知れません。
近年、ベンガラと言えば、岡山県の吹屋ベンガラが有名です。近年と言っても1800年代ですけど。
この吹屋ベンガラは有田の赤絵の原料に使われていたことで有名です。10年以上前にドイツのマイセンが当時の赤の原料が欲しいと言ってきたらしいのですが、残念ながら今の技術ではあの赤は出ないらしいです。もちろん吹屋ベンガラではありません。時代も違うし色も異なります。
そこで、度々の仮説が加わります。
色はベンガラかもしれない。それも天然のベンガラ。
そうなると考えられることは1つ。
黄土です。この黄土を熱すると第2酸化鉄になります。そうですね!第2酸化鉄と言うことは、ベンガラです。天然のベンガラが熱を加えることにより出来てしまいます。
光悦の「乙御前」茶碗の漆の直しが、漆とベンガラがどうかは検証出来ませんが、可能性は高いとおもうのですがいかかでしょうか?