黒楽茶碗の焼きに必要なフイゴのリトルストーリー
フイゴを黒楽茶碗の焼成最後まで吹くことは、相当体力を消耗します。
楽窯に空気を送るフイゴですが、焼成中は絶え間なく吹くことになります。
それも、ただ無性に吹く訳ではなく、窯から吹き出す炎の色を身ながら、出てくる煙や臭いを気にしながら、フイゴの吹く力やストロークを調整しながら吹いていきます。
京都の楽家では、代々からフイゴを吹く専門の職人の方がいらっしゃいますが、我々は全部一人で焼きをこなさなければなりません。
ですので、フイゴを吹きながら、いろんな自分の感覚を研ぎ澄まし、フイゴの吹く力を調整していくのです。
この作業全てを文章にすることは、非常に難しいです。
ただ単純なこともあります。フイゴは加圧した空気を楽窯に送る道具ですが、ただ闇雲に空気を送ってはいけません。
空気は窯内の温度より低いため、燃焼に必要な空気量より多く送ると、送られる空気により、逆に温度が下がってしまいます。
このことは、薪窯についても似たようなことが言えます。
温度を上げようとして、大割の松を一度に窯口から投入したら、その投入した松に温度を奪われ、またその薪が燃焼するまでにエネルギーが必要ななので窯内の温度が下がってしまうのです。
ですから、必要以上に空気でも薪でも窯内に入れてはならないのです。これは覚えておいてください。
どこまで話たかなぁ。スマホで打っているので、前の文章が見えなくてわからなくなります。
そうそう、そんなことで楽窯に於いては、フイゴの空気を臨機応変に加減して吹くのです。
たとえば、窯内の温度が揚がってくる時は、事前にフイゴの柄に重さを感じます。
この手応えを感じたら、これから窯の温度が上がってくる証拠。
なので、今までの空気の送り量では、燃焼に必要な空気が足らなくなるので、ストロークを増やします。
しかし、逆にフイゴの柄が軽く感じるようになったら、燃焼が下火になっているか、もしくは窯内の炭に火の道(部分的に炭が燃焼して、その場所がスカスカになって煙突のような状態になっている道を言う)が出来てしまい、無駄に空気を送っていることとなり、フイゴの吹きかたより、窯内の炭の状態を直ぐに確認はして、炭を補充したり、鉄の棒で炭をツツキ、炭を窯内に均一に配置しなければなりません。
このようにいろんな場面で絶えず変化するフイゴの吹きなのです。